保育所における怪我についての捉え方

保育所に預けて仕事している間、大事な我が子は安全に笑って過ごせているだろうか、いじめられてないだろうか、先生はちゃんと見てくれているだろうか・・・など、親としてはいつでも心配なものです。そんな皆様のお気持ちに寄り添うためにも、保育所におけるお子様の怪我や喧嘩についてどう捉えるか、どう伝え合うかは、保育者との信頼関係を結ぶ上でとても大事なことです。

怪我や喧嘩については、その背景も含め、連絡ノートなどによる文章でのお知らせでは適切に伝わらない場合があるため、お迎え時に口頭でお伝えするように心掛けています。

 

12歳児の成長段階においては、様々な理由で噛みつきや引っ掻きをしたりされたりという時期が誰しもあります。まず関わる大人の姿勢としては、その行為にでる際のこどもの情動について環境面や精神面などから考察し、よく話し合います。

行動の背景を探り、満たされていない部分があれば満たすことができる環境を与えます。園ではそのようにしてまず原因を考え、物的環境や人的環境づくりから取組んでいきます。

噛みつき等があった場合は双方の保護者に申し伝えます。その上で、今後のお子様にとって最良の生活づくりがなされるよう日常的に配慮して過ごします。お子様の噛みつきが落ち着くまでは、なるべく未然に防げるよう私達も日々の保育を心がけて参ります。

しかしながら保育所は『生活の場』であり、保育士は子どもの自発的な育ちに手を貸し見守る存在です。生活とは、自分で決め、自分で選び、自分で完結するべきものです。噛みつき引っ掻きはこどもの健全な成長の一過程です。交通事故のように目標ゼロを目指すようなものではありません。

ですから例えば我が子が誰かに噛みついた場合、叱って辞めさせるのではなく、痛いこと、やめてほしいこと、ほかの方法をして見せるなど、そのこどもに合った対応を連続性をもって行ないこども自身から変わっていく時を待つ姿勢が大事になります。

 

乳児期の噛みつき引っ掻きに限らず、集団生活においては全く誰も傷つけず誰にも傷つけられずに成長していくことはできません。幼児になっても引き続き、物の取り合いや喧嘩をすることから、譲り合いの優しさや待つ力、自分を守る力、友達との関わり方、そしてありがとうの心などを学び取ります。こどもはそういったひとつひとつの実体験を自分の中に吸収し成長していきます。

例えば「ストーブが熱い」「ぶつかると痛い」「グラスを落とすと割れる」などの実体験があって初めて危険を回避する能力が身に付きます。取り返しのつかないような怪我や失敗は大人が全力で防いであげましょう。しかし、小さな怪我や失敗は大人が未然に防いでしまってはいけないと考えます。こどもの頃には、小さな失敗とそれを乗り越える知恵を繰り返し体験し学び取ることが重要です。現社会では、実体験ないままに大人が事前に回避してあげる環境づくりが過度に進行しています。それにより危険を察知する能力(危機回避能力)が低下しているとも言われています。こども達は保育所で保護されているのではなく、まさに『生活』をしているのです。

怪我の様子を自分で伝えられるようになる幼児期になると、擦り傷程度の日常の怪我については、あえて保育者からは逐一ご報告しない場合もあります。それでも心配がないような強い信頼関係を築く事が保護者と保育者には必要であると考えます。

 

もちろんお子様が傷つけられた時の親の気持ちは充分理解致します。園での様子については必要な限り真摯にお伝えして参ります。喧嘩や怪我は今まさに健全に学び生きている証拠なのだと捉え、我が子を頑張れと応援し見守る姿勢も皆様と共有していければと願います。